コラム

預託金返還請求訴訟について(6)

預託金返還請求訴訟について(6)

ゴルフ場経営会社の民事再生と詐害行為取消請求等事件

                           弁護士 北村明美

 

1.B社が、20263月、大阪地方裁判所に民事再生手続開始を申立て、同日弁済禁止の保全処分決定及び監督命令を受けた。B社とは、前々々回、前々回にお話ししたB社である。

 預託金返還請求債権者であったAさんは、C社とB社を相手に、詐害行為取消請求及び強制執行免脱などの不法行為による損害賠償請求訴訟を提起したところ、名古屋地裁が詐害行為を認定して下さり、C社から、預託金全額と遅延損害金のかなりの部分を取り戻すことができた。

 次にB社とC社を相手に訴訟を提起したYさん。あと少しで一審裁判が結審するという時に、B社は民事再生の申立てをしたのである。

 

2.Yさんの訴訟はどうなるか。

 民事再生法40条の21項は、再生債権者が提起した詐害行為取消訴訟は、再生手続開始決定によって、中断すると規定している。担当裁判官は、C社に対する損害賠償請求事件と、詐害行為取消訴訟等を分離した。そして、C社に対する上記事件については、結審してすみやかに判決すると述べた。さあ、Yさんの勝訴判決となるのだろうか。

 詐害行為取消請求訴訟について、監督委員(大阪の弁護士)が受継してくれなければ、民事再生手続が終結するまで、訴訟は再開されない。再生債権者であるYさんから受継の申立ができる規定はない。一方で、Yさんは、B社に再生債権届出書を送付した。

 

3.名古屋地裁でなく、なぜ大阪地裁なんだろう。B社の預託金債権者のほとんどは、愛知県や静岡県に居住しているし、B社の本店所在地もゴルフ場も愛知県にある。20年ほど前にFカントリーグループのゴルフクラブが民事再生を申立てた際も、預託金債権者の多数が居住する名古屋ではなく、わざと東京地裁に申立てたことを思い出す。そんなことが行えるのか。

 民事再生法には、東京地裁や大阪地裁に申立てをすることができる規定がある。債権者が1,000人以上の場合である(民事再生法第5条)。もちろん、名古屋地裁に申立てることもできるが、B社は、事情を知っている書記官のいる名古屋にせず、何も知らない大阪地裁にしたのである。

 大阪地裁は、ドライにトコロテン方式で、素早く民事再生手続きを進めて行くだろう。

 

4.B社もC社もSカントリーグループである。Sカントリーグループで一番稼ぎがあるのは、飲料を生産しているE社である。202010月時点において、グループ全体の売上は280億円であると、自ら公表している。

 Sカントリーグループを持ち株100%で支配しているのはD氏及び家族である。D氏やその家族も相当の資産を有している。したがって、B社について、民事再生申立てをしなくても、誠意をもって、分割で預託金を返還していくことは可能だったと私は考える。

 しかし、D氏は、B社の預託金返還請求債権者に対し、どうしても、返還したくないと考えたとしか思えない。信用を落としても、民事再生すれば、一人当たり850万円の預託金返還請求権は、10万円ぐらいに引き下げることができ、かつ、10年後に支払うということも可能だからだ。

 もともと、Bカントリークラブの利用料や会費などでゴルフ場の運営はできていたので、ゴルフ場は営業を続けたまま、スポンサー探索を続けるという建前で民事再生案を作り、債権者の賛同を得るつもりなのだろう。

 そして、何年か経ると、スポンサー企業から借りた金銭は、SカントリーグループのたとえばE社が返し、ゴルフ場の土地建物に付けた根抵当権をE社に移行させるのである。

 B社は、すでに同様のことを行っている。Bカントリークラブのゴルフ場の土地建物の登記簿謄本を見ると、かつて金融機関から金銭を借りていたが、E社から金銭を借りて、金融機関の担保をはずし、E社の根抵当権が付けてある。

 Aさんの父上は「入場者数が年間42,000人もあって経営が成り立たないのは経営者の能力不足にあり、はじめから返す気のない絵空事で会員を騙し続けた行為は許せない。詐欺と同じだ。」という書面をB社に渡したが、会員の多くは同じ気持ちだろう。