コラム

預託金返還請求訴訟について

「ゴルフ倶楽部に入会した時に預けた保証金を返してほしいと要求したのですが、くじ引きで当たった人にしか返せませんと言われました。くじ引きでは、いつになったら返してもらえるかわかりません。体調が悪くてゴルフはできないので、生きているうちに、返して欲しいのです。」とAさん。

この保証金は、預託金のことで、ゴルフ場経営会社に預けた金銭のことである。ゴルフ会員権には、預託金制と株主制がある。

預託金制の会員権とは一定の金額をゴルフ場経営会社に預けて会員となる方式で、ゴルフ場経営会社は会員から集めた預託金を資金として、ゴルフ場を造り運営する仕組みとなっている。預けたお金は無利子で一定期間据え置かれるが、その後に退会する場合、預託金返還請求ができる。

ゴルフ会員権は、市場で売買することができ、バブル期はもちろん、バブル崩壊後の平成7~8年頃までは、額面金額より高く売却できたので、ゴルフ場経営会社に対し、預託金返還請求をする方は少なかったのである。

しかし、ゴルフ会員権の市場価格が暴落するようになると、据置期間が経過した場合、預託金返還請求をする方が増えてきた。

ゴルフ経営会社のある社長やその代理人弁護士は、
「会員から集めた預託金は、ゴルフ場を造るために、土地を購入したり、賃借りしなければならず、また、工事してくれたゼネコンへの支払いやゴルフ場の設計報酬として、全額使ってしまっているので、今更返してくれといわれても無い袖はふれませんよ。

ゴルフ会員権が高いときは、市場で売って儲けたくせに、安くなったら、うちに、預託金を返せというのは虫が良すぎると思うんです。」
と主張した。

さあ、皆さんはどう思いますか。

平成11年11月24日、名古屋地裁の中園浩一郎裁判官(現在は東京高裁判事)からは、「ゴルフ会員権市場での価格が高ければ、市場で売り、安くなれば、ゴルフ場経営会社に預託金返還請求をするというのは、会員の経済活動として、責められることではなく、自然のことである。」旨の判決をいただいた。さらに、「ゴルフ場経営会社は、預託金の据置期間が過ぎた場合、会員が退会して預託金を返還請求すれば、返還すると約束して、預託金を預かったものであるから、預託金を返還しなければならないことも考えて、資金繰りをし、ゴルフ場を経営すべきである。」旨も判示して下さった。

会員の預託金返還請求とゴルフ場経営会社との闘いは、昭和の代にすでにはじまっていた。次回に最高裁判例について述べよう。

預託金返還請求訴訟(2) 北村法律事務所