預託金返還請求訴訟(2)
ゴルフ場会員権預託金返還訴訟(2) ((1)は (ゴルフクラブ預託金返還訴訟) へ)
ゴルフ場経営会社は、何とか、預託金を返還しないで済む方策を考える。この志向性は、昭和の時代からもうはじまっている。 *** Aさんらは、昭和48年から昭和49年にかけて、新岡山カントリー倶楽部「D倶楽部」という名称の預託金会員組織(以下「本件ゴルフクラブ」という。) に入会し、退会するときに返還を受けるという約束で、100万~200万円の金銭を預託した。預託金据置期間は、正式開場後5年間と会則7条に定めてあった。 その後の昭和58年2月までに、上記ゴルフ倶楽部本件ゴルフクラブを退会し、預託金の返還を求めた。 ところが、ゴルフ場経営会社は、会則30条により、昭和54年10月頃、理事会の決議により据置期間を10年にしたとして、預託金返還を拒否した。会則30条には「本会則の改正は理事会の決議によるものとする。」と定められていた。 原審は、Aさんらに軍配をあげたが、ゴルフ場経営会社は、あくまで不服として上告した。 最高裁判所第一小法廷は、次のように判示して、上告を棄却した(昭和61年9月11日最高裁判決)。 (1)本件ゴルフ倶楽部クラブは、預託金会員の組織であって、ゴルフ場経営会社の意向に沿って運営され、独立した社団としての実体を有しないから、本件ゴルフ倶楽部クラブの会則は、これを承認して入会した会員とゴルフ場経営会社との間の契約上の権利義務の内容 を構成するものということができる。 (2)会員は、会則に従って、ゴルフ場を優先的に利用しうる権利及び年会費納入等の義務を有し、預託金を会則に定める据置期間経過後に退会のうえ返還請求できるものというべきである。 (3)会則に定める据置期間を延長することは、会員の契約上の権利を変更することにほかならないから、会員の個別的な承諾を得ることが必要であり、個別的な承諾を得ていない会員に対しては、据置期間の延長の効力を主張することはできない。 *** 失われた30年 「バブル経済の崩壊に基づく深刻かつ長期の不況によって、ゴルフ会員権の相場が著しく暴落し、預託金金額を大幅に下回るようになり、このような予想外の状況は、経済情勢の著しい変化・会社運営上などや やむを得ない事由が発生した場合に該当するから、本件延長決議は有効である」とか、「すべての預託金返還請求に応じると、経営に重大な支障を生じ、プレー権すら保護されない恐れがあるから、預託金返還請求権の行使は、権利の濫用である」などと、ゴルフ場経営会社代理人が抗弁しても、裁判所は「預託金返還契約を締結して10年間もの長期の据置期間を設定する以上、据置期間満了までの間に経済状況の変動があることも当然考慮に入れるべきである」「権利の濫用とはいえない」と正論の判決をする。 しかし、ゴルフ場経営会社の、何とか預託金を返還しないです済 まそうという画策は、まだまだ続き、現在も進行中なのである。 ゴルフ場経営者とその顧問弁護士ら側 が考えたのは、 〇くじ引きに当選した会員に預託金を返還していく方法。 〇株式に転換することに同意してもらう方法。 〇5%支払うので永久保証金転換に同意してもらう方法。 〇新しい会社を設立して、その会社にゴルフ場の土地建物・動産等一切と従業員を移転し、旧会社には預託金債務だけを残すという詐害的新設会社分割。 〇ゴルフ場の土地建物・動産等一切を他の会社に売却する。買い取った会社は、適正な価格で買った、預託金返還債務は引き継いでいないと主張し、ゴルフ場の名称を変えて堂々と経営するという方法。 〇ゴルフ場経営会社A社とそのグループ会社B社が共同して、強制執行を妨害どころか・ 免脱する方法。 このように書いていると、ゴルフ場経営会社は、頭脳明晰で法律もよく知っており、他のゴルフ場経営会社の情報を収集することもできるのであるから、預託金を返して欲しいという会員(決して会員全員ではない。)に、約束通り返すという方向で、その頭脳や情報を使ってもらえないかと願うばかりである。